探偵として生きて
人生のなかの多くの時間を探偵の仕事に傾け費やし、正直なところ「プライベートと仕事」の区別が付かない自分に「もっと違った生き方」もあっただろうと時々ものおもいにふける。
後悔とは少し違う「他の可能性」を想像しての思いからきている自己分析でもある。
探偵を仕事にしてきて間違いなく言える事は「普通の人生」では味わえない緊張感やスリルが過去に数多く存在した。
普通の仕事では味わえない魅力を持っている反面、普通の会社に勤務し毎日同じ勤務先に行き安定した収入と福利厚生といった比較的平穏な日常を送る自分も想像したりする。
ある日、職場で出会った女性と恋愛し結婚、家庭を持ち子供達の成長を見届けながら年老いてゆく。
所謂、「お堅い」人生と両極に位置する探偵が考える「無いものねだり」が妄想になって表れる。
探偵は多くの人生経験や世の中のエピソードに極めて近い場所に存在する職業であるが、手掛けた仕事が形に残らないため少々寂しい気分になる。
人知れず影で動き報告しを繰り返す人生である。
それでもその人生を続けていくだけの価値はあると思っていなければ悲しい人生ではある。
探偵がもたらす
探偵が依頼人から調査依頼を受けて「調査結果」を報告し引き換えに報酬を得る。
探偵がもたらす調査報告で依頼人の考え方や行動に変化が生じる。結果、依頼人の人生のターニングポイントにもなりうる。
「あのとき・・・しておけば」のような後悔を残さないため調査を実施する方が殆どと言え、何事も「やらない後悔」よりも「やって後悔」を選択した方が後々の人生に好循環をもたらすと数々の依頼人達を見ていて考える。
報告の内容次第では「予想外の結果」も存在し精神的ダメージを受けて寝込んでしまう方もいらっしゃる。
それほど「依頼人の心中」は切迫した状況であるとも言え、人によっては調査結果から与えられるダメージに耐えられない依頼人も少なくない。
以上の事から理解できると思うが「探偵がもたらす結果」次第で依頼人に変化が生じ、稀に結果に耐えられない方は「命」に関わる場合もある。
不幸にも命を絶つ、命をおとす結果となった依頼者や対象者も存在するのである。探偵という職業を本当の意味で知っている人物ならば理解し共感して頂けることだろう。
調査が依頼者の人生を大きく左右する場合もあると探偵自身が自覚する必要があるのである。依頼も内容によっては軽々しく受けるべきではない。
探偵の業務とは「軽視できない物事が全て」と言っても過言では無い。覚悟が必要な職業なのである。
非常に残念なことであるが、この頃そのような覚悟とは無縁の「利益至上主義」の探偵事務所が散見される。
このような探偵は、現実には一度も現場を経験していないようなオーナー経営者、または「探偵の名をかたる悪徳商法」を実施して利益を得ている商売人と言える。
利益を得るだけなら良いが、業界の評判を落とさずにやってほしいものである。これらの探偵事務所の存在に、多くの真っ当な探偵事務所が迷惑している。
会社である以上、利益追求は避けて通れないのだが、当然のことながらそれを大義名分にすれば何をやってもいいわけではない。
そもそも利益至上主義なら探偵業界以外の方がよいと思うのだが。